2016年2月10日水曜日

転入先でまさかの保育園「不承諾」!「引っ越し入園」の落とし穴。私の「待機児童」体験、「待機児童ゼロチャレンジ」に参加します! #taikijidou0challenge  

双子のパパYuichiさんが立ち上げた「待機児童ゼロチャレンジ」 #taikijidou0challenge という活動を、たまたま流れてきたSNSの記事で知りました。

普段は時事ネタから離れて、淡々と?言いたいことを言いたいときに、自由に発信している霜月ですが、「待機児童」については一言も二言もいいたいことがある!
 
ということで、「待機児童ゼロチャレンジ」に参加します!


 
ちなみに、この「待機児童ゼロチャレンジ」には参加条件があります。それがこちら。
 


 
 
5番目の「自分が待機児童について考えを発表して欲しい人を2名指名する」については、ちょっとご勘弁いただくこととして・・・「バトンが回ってきていなくても、勝手に参加してくれたら嬉しいです」というお言葉に甘えて勝手に参加します!
 

■保育園とはトコトン縁がありません


「霜月さんくらいバリバリ仕事している人だったら、待機児童なんて無縁でしょ?」とよく言われます。バリバリかどうかはさておき、三回の産休・育休を経験しつつ、正社員として働きつづけているので、少なくとも人並みには仕事をしてきているのだとは思います。
 
なのですが。
 
実はとことん保育園とは縁がありません。夫婦そろってフルタイム労働者にもかかわらず、三人の子供たちは公立の保育所には入園はできませんでした。自宅の目の前に保育園があるのに。
 
そのため、祖父母宅、認証保育所、私立の認可保育所、幼稚園+預かり延長保育、と、ありとあらゆる手を使って乗りきってきています。
 
 

■保育園の入園はどうやって決まるのか? 

 
保育園への入所活動、いわゆる「保活」を経験したことのない方向けに簡単に説明します。

保育園への入所可否は、各自治体の定める基準に則って決められます。基準は多くの自治体でポイント制が採用されており、「保育所利用調整基準表」に則って、付与されるポイントが決まります。
 
ポイントの定義や基準は自治体によって異なりますが、多くの場合、基準表には「基本指数」と「調整指数」の合計指数が、数値の高い順に入園が決まります。同一指数となった場合は「優先順位」をもとに入園順位が決まります。
例えば、東京都中央区では、「中央区保育所利用調整基準表」が定められています。

基本指数とは、両親の労働形態に対して付与されるポイントです。例えば、居宅外労働が月20日以上、17時間以上の就労が常態となっている場合、20ポイントが付与されます。両親ともにフルタイム勤務だと40ポイントになります。

これが、居宅内労働者、かつ自営業だと、17時間以上の就労が常態の場合、基本指数は19です。自宅で開業しているお医者さん、自宅で店舗を営んでいる等が想定されます。

調整指数とは、各家庭環境を反映させ、「より保育の必要性が高い家庭」がきちんと保育サービスを受けられるよう、順位付けをするために設定されています。基本指数に対して加算・減算を行います。

例えば、東京都中央区では、以下のような内容(一例)が定められています。
・虐待などで社会的擁護が必要な場合:+7
・ひとり親世帯:+5
・生活保護:+4
・生計中心者が失業している場合:+4
・兄弟姉妹が既に入所している保育園への入所を希望:+3

保育園の入所事情が特に厳しい地域では、基本指数が満点であることは当たり前、それだけでは入園が難しいため、この調整指数でいかにポイントを積むかが入園可否の分かれ目、という場合がほとんど。実際にバリバリのフルタイム労働者夫婦である筆者も、この「調整指数1ポイントの壁」で、保育園への入所ができませんでした。
 
どうして保育園に入所できなかったのか?その理由は、大きく2つありました。

 

■私が保育園に入園できなかった理由その1. 両親の近くに住んでいたから
 

最初に「保育所に入所できない」という経験をしたのは、第一子のときでした。当時は両親の近くに居を構えていました。「孫の成長過程を近くで見てもらいたい」という、まぁ親孝行的な感覚で、両親の側に住んでいたんですね。

いざ子供を保育園に入れようかと思っていろいろと調べたら、当時住んでいた自治体では「近くに祖父母が住んでいる場合:-5」という調整指数があったのです。同一ポイント上に十数人、時には数十人が並ぶ保育園入所戦線において、マイナス5ポイントは致命的でした。ちょっと過激な表現を使うと、「親孝行をしたら、保育園に入れなかった」というところでしょうか。

それでも当時は「そんなものか、無知な自分が悪かった。仕方がない」とあきらめ、両親に子供のお世話をお願いして、職場復帰しました。もちろんケジメとして、保育園に払う保育料よりはるかに高い謝礼を毎月納めていましたけれど。

 

■私が保育園に入園できなかった理由その2:  引越しをしたから 


しばらく両親に子供を預けて仕事を続けていましたが、諸般の事情により、転居することになりました。転居先では両親のサポートは得られませんから、今度こそどうしても自分たちで預け先を確保しなくてはなりません。

転入先の自治体(A区とします)に出向き、説明を受けたところ、「自治体外からの転入者には、調整指数マイナス5ポイントがつく。回避するためには、賃貸契約書もしくは売買契約書の写しを提出する必要がある」という説明を受けました。

当時、借家を予定していたので、それでは賃貸契約書の写しを用意しようと思ったところ、問題にぶつかりました。それは「賃貸の場合、契約書を交わしたら、可及的速やかに家賃が発生するのが通例である」ということです。当たり前ですね。でもこのときは大きな問題となったのです。

4月入園のためには、申し込み書類は12月中には提出しなくてはなりません。つまり、12月中には、賃貸契約書が必要なのです。でも実際の引越し予定は3月末。それまでは、住民票を動かすことも、転居することもできません。

このままでは3か月分の家賃を空き家に払わなくてはなりません。不動産屋さんに事情を説明し、大家さんと交渉してもらった結果、ご厚意により、家賃発生起算日を3週間ほど延ばしてもらうことができましたが、それでも2か月分の家賃を、まだ住む予定のない家に払いました。

調整指数マイナス5を受け入れることは事実上の入園断念。当時とっくに育休から復職していた筆者にとっては、それはキャリアを断念することと同義でした。大きな出費でしたが、キャリアを絶たれるリスクを軽減できるならと思い、受け入れました。

また入園できなかった場合に備えて、認可外保育園にもいくつか問い合わせをしましたが、前年秋の時点で翌年4月入園枠は既に予約でいっぱい。「2月に認可の結果が出てから連絡をください」とのことでした。

筆者は自治体外からの申し込みだったため、書類は居住していた自治体(B区とします)を経由して提出しました。通常であれば自宅に届くはずの「承諾・不承諾通知」も、申込者手続き者=居住自治体B区宛に届くため、B区の担当者が結果が出たら電話をくれることになりました。
 
 

■そして運命の日

 
あれは忘れもしない2月のある日。

運命の電話が鳴りました。日中は会議などで予定が詰まっていることが多く、私用携帯に電話がかかってきても対応できないことがほとんどなのですが、その時だけは、たまたま在席しており、電話に出ることができました。B区の担当者からでした。結果はまさかの「入園、不承諾」。

頭が真っ白になりました。

保育園への入園は「保育サービスが必要な家庭から順に入所させる」が原則のはずです。そして筆者はすでに子供を預けて仕事をしており、居住区では保育サービスを受けている。その自分が「不承諾」。つまり転入先の自治体では「保育サービスの必要性が高くない」と認定された、ということなのです。既に仕事をしているのに

 

 

■緊急事態、発生。キャリア断念のリスクが現実に

 

「このまま預け先が見つからなかったら、会社を辞めなきゃならない!!」

恐れていたキャリア断念のリスクが現実のものになった瞬間でした。
 
たまたまその日は夕方に予定がなく、急ぎの仕事も抱えていなかったため、急いで上司に事情を説明し、時間休を取り、通園可能圏内の認可外保育所に、かたっぱしから電話をかけました。
 
既に仕事をしているのに、転入先で保育園に入れない。このまま預け先が見つからなかったら、キャリアを断念しなくてはならない。自分の人生がかかっているんです!と、窮状を訴えました。

回答はどこも同じ。「認可の結果が出て、予約のキャンセルが複数出ている。集計して、もし空き枠がある場合には連絡します」というものでした。
 
電話をひと通り終えたころには、もう夕食の時間。

「どうしてこんなことになったのか?」とか、「仕事を諦めて専業主婦になれと言うのか?」とか、「せっかく家賃を2か月も前払いしていたのに!」とか、いろいろな思いが頭をよぎりました。
 
でも一番は「このまま、預け先が見つからなかったら、どうしよう?」でした。

ベビーシッターを雇うか。子供を自宅において、保育園に入れるまで在宅勤務にするか。勤務時間を短くしてパートタイマーになるか。せっかくここまで実績を積み上げてきたのに?いっそ、夫に仕事を辞めてもらうという選択肢は?

考えた結果、出した結論。それは、「預け先が見つからなかったら、退職するしかない」でした。
 
 

■二度目の運命の電話


そして夜の8時。その日二度目の運命の電話が鳴りました。「空きがある場合には連絡する」と言ってくれていた、認可外保育所からでした。

 「集計の結果、1名分だけ空きが出た。今、この電話で決めてくれるなら、入園の予約をする」という連絡でした。もちろん、即決です。自転車で片道30分、保育園への送迎だけで往復1時間かかる場所でしたけど。
  
この時の出来事を今振り返ってみても、本当に運に恵まれていたとしか思えません。

不承諾通知の電話連絡を、たまたま早く取ることができたこと。緊急の仕事を抱えていなかったため、即座に仕事を切り上げることができたこと。それによって、少しでも早く認可外保育所への電話攻勢を始められたこと。認可外保育園からの連絡を、1コールで取ることができたこと。

どこかで少しでもタイミングがずれていたら、筆者が滑り込んだ最後の一席は、他の方に回っていたことでしょう。実際に翌日、保育園で入園手続きをしていたときに、お子さんを連れて、アポなしで園に直接、空き状況の確認に来られた方がおられました。「途方に暮れる」。それ以外に適切な言葉が浮かばないような表情をしていました。連れていたお子さんは、わが子と同じくらいの月齢でした。

「自分もあの方と同じ立場になっていても、おかしくなかった」。そう思うと、改めて自分の幸運に感謝せずにはいられませんでした。


■結局、どうして入園できなかったの?


入園先が決まって少し落ち着いてから、「結局、なにが原因で入園できなかったんだろう?」と考え直してみました。

役所では不承諾となっても、選考結果の詳細は一切教えてくれませんから、今一度、基準表を眺めて、仮説を立てました。

すると、ある調整指数が目に留まりました。
・待機期間が1年以上経過している:+2
・待機期間が6ヶ月以上経過している:+1

筆者の場合、まだA区の住民にはなっていない「転入予定者」ですから、もちろん待機実績ゼロ。でも、「激戦区だから簡単には入園できない」という前提で、生後2か月を過ぎたら入園申し込みをして、待機ポイントを稼ぐ人もいるという話は聞いていました。その人たちには、待機期間に応じて状況の加点が付与されていたことになります。

A区では、産休・育休を取得中の人も、転入前に転入前自治体で保育園に入所していた人も、調整指数は同じでしたから、どうやらこの「待機期間」による加点の有無が大きな影響を及ぼして、「就業しているにもかかわらず、転居のタイミングが悪かったことで、認可保育園への入園が不承諾になった」という事態に陥ったようでした。

ちなみに、筆者が経験した、「就業しているのに、転入予定者として扱われたことで、在住者より不利になり、保育園への入園ができなかった」という状況については、President WOMAN Onlineが「保育園入園と引越し、同時にできる?」という記事で詳しく、わかりやすく解説しています。

筆者のケースでは「管外協議」として扱われ、転居の証明書類(賃貸契約書の写し)を提出し、この点では居住者と同等に扱われたものの、「待機期間」に対する調整指数がなかったため、僅差で不承諾になったのだと推測されます。


■「完璧な制度」など存在しない。だからフィードバックが大事


役所も落ち着くと思われるであろう5月。何度も通った保育課を改めて訪問しました。目的はもちろん、「待機期間に応じた加点」という調整指数の落とし穴を指摘し、改善を要求することでした。この自治体の調整指数については、他にも「公平性が保たれない」と思われる点があったので、淡々と指摘をしました。真摯に話を聞いてくださったご担当の方には感謝しております。

現在の待機児童問題は深刻です。「働きたくても働けない」、「預けたいのに預け先が見つからない」という問題だけではなく、既に就業している人であっても、生活基盤に変化を及ぼすような変化があると預け先がなくなくってしまうという事態に簡単に陥ってしまう、そんな脆さを抱えているのが現状なんですね。

最初から完璧な制度など、存在しません。だからこそ、気づいたことがあったら声を上げて、きちんとフィードバックをする。そして時間がかかったとしても、改善を求めてゆく

ひとりひとりの声は小さくとも、まとまれば影響力を与えることができるはず。「どうせ自分ひとりが声を上げたって」と最初から諦めてしまっては、何も変えることはできません。

ちなみに筆者が数年前に指摘した調整指数の落とし穴は、すべて今年の春に改正されることになったようです。きっと、他にも声を上げた方々がおられたのでしょうね。

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

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